〜特別展紀行〜

特別展「〜特別展紀行〜源流に行こう!」

はじめに

 平成11年3月27日〜5月5日の期間、平成10年度第3回特別展「甲武信(こぶし)源流物語」を開催した。
この特別展の担当になった私は開催準備にあたり、甲武信岳に2回登り、荒川・笛吹川・千曲川源流の調査を行いました。
 そこで、登山経験の全くない素人の私が甲武信岳に登り、初めてみた3つの川の源流について紹介していこうと思います。

甲武信岳山頂からの富士山
甲武信岳山頂からの富士山

甲武信岳に登る
 

深田久弥が日本百名山のひとつとして紹介した甲武信岳は、比較的楽に登ることができる山だと言われています。また、3県の境界に位置しているので埼玉、山梨、長野県側から登ることができます。しかし、埼玉県側からの登山道は、整備が遅れているので上級者向きといえます。初心者には、長野県川上村毛木平からの千曲川源流遊歩道を利用するのをお勧めします。千曲川源流碑まで約3時間、そこから急坂を登り約1時間で山頂に着くことができます。このルートは、3つの川の源流を訪ねるのにもベストルートだといえます。
 私の登山初体験は、山梨県三富村西沢渓谷からの中級者コースでした。lO月の初旬、前日の台風により雨で削られた登山道を重い撮影機材などを背負い約6時間かけて登り、登山とは、こんなにもつらいものなのかと思いながら、一歩一歩ただひたすら頂上に向けて歩き続けました。しかし、当日に泊まった甲武信小屋から見る関東平野の夜景や日の出は、登山の疲れを忘れさせるほどすばらしいものでした。2回目の登山は、その2週間後に長野県側から登りました。このコースは、初心者向きで、楽に登ることができ、天候にも恵まれて山頂から富士山の景色を楽しむ余裕もでき、少しだけ山の楽しさがわかったような気がしました。

埼玉の母なる川”荒川”の源流 

甲武信岳山頂から東に約20分ほど下ったところに甲武信小屋があります。荒川の源流は、ここから案内板に従って約20分ほど北東に下った標高2200mの荒川真ノ沢奥にあります。源流点には、昭和61年(1986)8月1日(水の日)に建てられた「荒川源流点標」があります。ちなみに、荒川173kmの起点は、ここから約8km下流にあります。
荒川真ノ沢源流
荒川真ノ沢源流
笛吹川源流
笛吹川源流
 私自身、源流のイメージというと水滴が一滴一滴したたり落ちてくる場所だと思っていましたが、昨夏は降水量が多く源流点では、滾々と水がわき出ていて水量は豊富でした。源流点付近は、シラビソの原生林が鬱蒼と茂っており日中でも薄暗く、地表は水をたっぶり含んだコケにおおわれています。しかし、心ない人によりコケが踏み荒らされていたのが残念でした。


危険を感じる笛吹川源流

 日本三大急流のひとつである富士川の支流、笛吹川の源流は、山梨県市川大門町高田にある起点から54.2km先の甲武信岳の南にありますが、目印になるようなものはありません。通常、笛吹川の源流というと、甲武信小屋から西へ水場の案内板に従い約10分はど下ったところです。ここには、甲武信小屋の飲料水を汲み上げるポンプ小屋があります。甲武信小屋では、この汲み上げた水を1リットル50円で売っています。ちなみに、味覚音痴の私にはわかりませんが、3つの川の源流水のなかでは、笛吹川の源流の水が一番おいしいそうです。
 笛吹川の源流点付近は、風化して割れた岩くずでおおわれた急斜面にあり、注意して歩かないと滑り落ちてしまいそうな、身の危険を感じます。荒川の源流や千曲川の源流風景とは、全く違った源流の風景を見ることができます。

楽に行ける千曲川源流
 千曲川の源流には、長野県川上村毛木平から整備された千曲川源流遊歩道を使い約3時間ほどで着くことができます。3つの川の源流のなかでは、比較的楽に行くことができます。源流点までは、川上村の木である唐松が植林された森の中を千曲川のせせらぎを聞きながら歩いていけます。川沿いに源流まで行くことができるのは、ここだけです。源流点には、千曲川の起点でもある源流碑が建てられており、日本一の大河川信濃川(長さ367km)は、ここから始まります。
 千曲川の源流点付近は、荒川の源流点と同じくシラビソの針葉樹で覆われ、日中でも薄暗い場所です。しかし、この場所で源流のせせらぎを聞き、源流の水で入れたコーヒーを飲んでいる自分は、なんて贅沢なことをしているのだと思いました。

千曲川源流 甲武信岳山頂に立ち思うこと

 甲武信岳の山頂からは、東京湾に注ぐ荒川、駿河湾に注ぐ富士川(笛吹川)、日本海に注ぐ信濃川(千曲川)の源流の谷が一望でき、甲武信岳が大分水嶺であることがよく分かります。眼下にある源流の森の保水力や、その森を日常の山の手入れで守っている人々のおかげで、維持されている3つの川。その森や川が荒廃してきている今、私達は、森や川とのよりよい関係を新たに築いていかなければならないと感じています。
千曲川源流


(主任 高橋朝彦)

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