特別寄稿
アユと友釣り
7月17日から8月31日までアユをテーマにして、さいたま川の博物館で文化誌的な面からの展示が開催されますが、同時にその自然史的な面を扱った展示を自然史博物館(長瀞町)で開催します。アユについて多方面から取り扱いますので、あわせてご覧いただければ幸いです。
ここでは、アユの生態とそれを利用した漁法である友釣りについて少し紹介します。
アユは、北海道西部から本州、四国、九州のほぼ全域に分布し、南限は沖縄本島です。ただし、奄美大島以南はリュウキュウアユという別亜種です。アユは川の魚という印象が強いですが、一生を川ですごす魚ではありません。サケなどと同じように、川と海にまたがって生活する魚です。
アユは夏から秋にかけて川の中〜下流の、水深の浅い小石や砂利の多い瀬で産卵します。約2週間で孵化し、仔アユは海に下り、プランクトンを食べながら浅海で生活します。早春になると河口域に近づいてきて、川をさかのぼります。
アユは川の中流域に達すると、ここにすみついて定着生活に入ります。ここまでに川をさかのぼり始めてから約3,4ヶ月が経っています。アユの食性はこの時期に、動物性のものから藻類中心に変わります。流れの速い瀬にはアユの餌となる藍藻や珪藻などの付着藻類が石に付きます。夏はアユの成長期ですので、この付着藻類を活発にはむようにして食べます。
この時期、アユはよく知られている「なわばり」を作り、闘争本能が強くなっています。これは1尾のアユが瀬で一定の空間を占拠して、そばへ寄ってくる他のアユを追い払うというものです。成長に必要な藻類を確保するためで、アユ1個体でおおよそ1uの場所を占有します。なわばりを持っているアユは特別なことがない限り、そこから動くことはありません。
アユ漁には鵜飼いなど様々な漁法がありますが、アユがなわばりを持つ時期に行われ、また私たちがよく目にするもっとも代表的な漁は友釣りです。
この漁法は、アユの「なわばり」の習性を利用したものです。
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| 荒川栗谷瀬橋(皆野町)付近での友釣りの様子 |
10m以上もある竿を巧みに操り、おとりアユを良
い餌場と考えられる石の周りに泳がせ、なわばりを
持っているアユの防衛行動を誘います。 おとり用のアユを鼻環などで糸につなぎ、その後ろに流しバリをつけて、アユのいる川の瀬に入れて泳がせます。すると、自分のなわばりに侵入してきたおとりアユを追い払おうと体当たりを試みているうちに、ハリにひっかかってしまうのです。ハリがアユの頭や体の肉にささるのであって、アユがハリに食いつくわけではありません。これは「友」ではなく「敵」を釣っているのですが、「友釣り」と呼ばれています。
現在、自然状態で川と海を行き来するアユは大変少なくなりました。そのため、多くの場所でかなりの数のアユが放流されています。今友釣りで釣られているアユのほとんどは、この放流されたアユです。
(県立自然史博物館 主任学芸員 中村修美)
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